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2016年3月28日月曜日

短編私小説「発疹」 第1話


短編私小説「発疹」 第1話







さて、小説のお時間です。


網葉きよら 「発疹」


こちらの小説は、凡そ20000字で、二日ほどで作り上げた私小説風物語となっております。


全10回くらいの掲載予定にはなりますが、字数的に増える可能性もありますので、ご了承下さい。


また、今回の小説は、私小説風ということで、文章硬めのセッティングとなっており、少々乗り心地が悪いかと思いますが、その点ご了承頂ければ幸いです。


さらに、掲載終了後、「短編小説丸々立ち読みコーナー」へ、こちらの小説を落とし込みますので、電子書籍としての閲覧も可能となります。





例によって、フリガナは(カッコ)として記述。今回のフリガナは少な目設定。
読みやすいよう、無理くり改行している部分アリ。
3日連続更新の1日お休みとなり、ところどころイメージ画像を挟んでおります。


画像のほうは、

無料写真素材の「写真AC」様

フリーイラスト素材の「シルエットAC」様

からお借りしています。

2社様には、心よりお礼申し上げます。





それでは、ごゆっくり読んで頂けることを心より願っております。




記事一覧


第1話 第6話
第2話 第7話
第3話 第8話
第4話 第9話
第5話 最終話



発疹 第1話





 それは、唐突に始まった。

 服の下に入り込んだ魔物。そいつがどうにも暴れ始め、私の身体を侮蔑(ぶべつ)しながら、あるいはのたうち回りながら始まりの鐘を鳴らしたのだ。

 そいつはどこにでも現れ、いつも潜んでいた。だが、潜んでいるうちはまだ良い。ほんの少しそいつが顔を覗いただけで、私は一切の猶予を絶たれることとなり、一切の行動を制限せしめるほどに侮蔑始めるのだ。

「たまらない、こいつはたまらない」

 そう言葉に発するも、我が両手はそいつの物。我が全身も、脳も、果ては魂とやらまで囚われてしまう。




 もう一度言おう。

 そいつは、唐突に始まったのだ。

 これには、屈強なローマ兵も、軍国主義にまみれた兵隊さんも、いや、哲学者ニーチェですら鬱々(うつうつ)と過ごすことになるであろう。

 ――痒(かゆ)み、身体の痒み、全身の湿疹、発疹(はっしん)。

 湿疹や発疹と言えばどこか軽い程度の想像をされるであろう。また、痒みと述べても、蚊に刺されるくらいのことを思いなすであろう。だがしかし、そうではない。もっと劣悪、さらに醜悪なそいつである。普通に考えれば、[頭が痒い]とか、[蕁麻疹(じんましん)が出来て痒い]とか、[軽くカブレた]などという言葉が浮かんでくるはずだが、やはりそいつは違う。例えるなら、いやもうよそう。いくら例えたところで、この痒みが他人様に分かるはずもない。だいいち、私自身それを表現し得る言葉を持ち合わせていないのだ。もし持っているとするなら、そこらへんにいるであろう若者や店員、友人や兄弟を捕まえ、

「俺、今、相当痒いんだ。その痒さといったらねえ、まさに――」

 これ以上の言葉が出てこない。それは当然だ。何か言葉を紡(つむ)ごうにも、あの痒みに気を取られ、思考がすぐさま停止してしまう。また、停止だけならまだユルイほうで、「ちょっと待って下さい、身体を掻いてから説明しますから」などという、どうにもくぐもった言葉が、「ちょっと待って……」の部分だけで終わってしまうのだ。最初から無言であれば他人は何も思うまい。しかし、「ちょっと待って……」と発せられた後、何も続かないのだから余計にたちが悪い。

 仮に私がこう言われたのなら、「いや待つけどさあ、いつまで待てばいいんだ? 俺、用事があるから、そろそろ行かなくちゃいけないんだけど」と、その場をすぐさま後にするであろう。それが[無言]ということであれば、こちらもいくらか察し、『ああ、この人は何かしら抱え込んでいるんだな』などと遠回しな詮索を行い、そしてそのうえで、両手を必死に動かしている彼に対し、数度のうなずきを手向けることになろう。




 しかし、現実はまったく異なる趣向を現すのだ。痒いのはこちらで、その場を去っていくのが誰それ。

 去ったあと、私はこう思う。

『あ、痒い』

 それだけだ。私は今、それだけの意向にて生きている。私だって、色んなことを考え、様々に行動したいと常日ごろから願っている。もちろん、出来ること出来ないことは存在するが、それらを踏まえたうえで生きている。だが、例のそいつが邪魔をする。ことに、考えれば考えるほど割って入り、寝ようと思えば思うほど、身体を捉えてやまないでいる。

「……軟膏塗ってもダメだし、病院行くしかないか……」

 私は生粋の病院嫌いである。何が嫌いかといえば、まず待たされる。次に、あのマイナスオーラ全開な雰囲気に憎悪を感じる。そしてなにより嫌なのは――

 もしかすると別の病気が見つかり、果ては連鎖し、ゆくゆくは病院のベッドであらぬ思いを抱きながら死の床につくのではないか、という懸念が頭の中を駆け巡るからだ。この点を詳しく説明したところで、「単なる杞憂(きゆう)だろ」というあけすけな言葉が返ってくるだけであろうから、これ以上は語りたくはない。いやむしろ語りたい話なのかもしれない。そうだ、そうに違いない。だからこうやって文章をカタカタ羅列しているのだろう。

 そんな最中、またそいつが現れた。




 一段落書き、書いては身体を掻(か)き始める。単語を想起し、想起しては掻き毟る。ああ……これでは何も出来やしない。文という文が断裂せしめ、狂おしいほどの崖がついぞ出来ると、あとはもう飛び降りるのみ。一心不乱に掻いては赤い斑点が転移を始める。そして斑点を見つめては、次に掻く場所を選定し始める。

 いや待て。選定しているのはおかしい。どこかおかしい。なぜ私は今、掻く場所を探しているのだ?

 ――分からない、とにかく分からない。だが、その[分らない]というのがまた、理解の上限を越すほどの発想だ。




第2話へ・・・



「発疹」 記事一覧


第1話 第6話
第2話 第7話
第3話 第8話
第4話 第9話
第5話 最終話



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4 件のコメント:

  1. 待ってたで。
    今度は私小説か。
    面白くなりそうやね。
    じっくり読ませてもらうんでよろしく。

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    返信
    1. コメントありがとうございます。

      今回の小説は、多少硬めとなっており、
      なおかつ「勢い」にて構成しておりますので、
      読みにくい部分が多々あるかと思います。
      その点、ご了承頂ければ幸いです。

      また、他に何かございましたら、
      お気軽にコメントよろしくお願い致します。

      それでは、また!

      削除
  2. 私も待っていました。
    とりあえず2話まで読みましたが芥川の作風にどこか似ていますね。
    文体が似ているのか作風なのか判らないのですがそのように感じます。
    人を惹きつける展開でもありますから私もゆっくり読ませて頂きますね。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。

      小説のほう、読んで頂き本当に感謝致しております!


      また、お付き合い頂けるだけでもうれしく思いますので、
      これかれもどうぞよろしくお願い致します!

      それでは、また!

      削除